アレクサンダーテクニーク体験談:ピアノ山田真理子さん

【川浪】 こんにちは、川浪です。今回は、アレクサンダーテクニークのレッスンを受講されている、山田さんにお話をうかがっていきたいと思います。まずは、自己紹介をお願いします。

【山田】 東京音楽大学、ピアノ演奏家コース三年生、山田真理子です。よろしくお願いします。ふだんは、コンサートとか発表会で演奏したり、コンクールを受けたりしています。それ以外だと、高校の合唱部の伴奏したり、音楽教室で、ピアノやソルフェージュのレッスンをしています。

奏法に悩んでいた時期にアレクサンダーテクニークに出会った

【川浪】 山田さんが、そもそもアレクサンダーテクニークを知ったきっかけは、何だったんですか?

【山田】 アレクサンダー・テクニークを知ったきっかけは、本ですね。ピアノを弾いていくうえで、すごく奏法に悩んでいた時期があって、色々どうしたらいいんだろうと試行錯誤をしていたときに、大学の図書館でアレクサンダーテクニークの本を見つけました。それから、いろいろ読み進めていったら、すごく面白くて、個人的にも書店で買って読んでいました。

【川浪】 本を読まれたのは、どれぐらいの時期ですか?

【山田】 大学2年生です。レッスンを始めた時期の、ちょうど1年前ぐらいから、読み始めました。

【川浪】 どういうところに興味を持ったのですか?

【山田】 これまでピアノを弾いているときに、自分の身体の構造ってあんまり考える機会がなかったんです。例えば、腕とか手とか、どういう仕組みで動いているかというのを、あまり考えてこなかったので。感覚だけで弾いていると、やっぱり難しいんですよね。そういうのを分かりながら弾けたらいいなというのがあって。

【川浪】 なるほど。身体の仕組みや構造も、ちゃんと理解したうえで弾けるようになりたいなと思ったんですね。それ以前は、どんな感じで弾いていたんですか?

【山田】 わりと表現のほうは、よく考えてたんですよ。例えばキラキラした音でとか。耳のほうで音色を考えることはしていたんですけど、身体の使い方を考えながらやったたことは、全然なかった気がしますね。何も仕組みが分からないでやっていると、間違った動きでずっと弾いていることもあるわけじゃないですか。そうすると、練習を何度繰り返しても全然上達しないこともあったり。

ピアノの先生から、無駄が多い弾き方をしていると言われ、、、

【川浪】 具体的にどういうことで悩まれていたんですか?

【山田】 実は大学でレッスンを受けているときに、「きみ、結構、無駄が多い弾き方をしているよ」と、先生におっしゃっていただいたんですけれども、やっぱり自分が小さいころから、ずっとそれで弾き続けていたので、どこが無駄なのかが分からなくて。

【川浪】 じゃあ、それまでは自分では問題ないと思っていたけれど、大学に入って付いた先生に、無駄が多いねと指摘されて……。

【山田】 そう、自分って無駄が多い弾き方していたんだなと思いました。

【川浪】 そのとき初めて奏法を見直してみようかなというふうに思われたということですか?

【山田】 そうですね。その先生が弾く演奏って、音色の伸びも、音量、も、音質も、全然違って、弾き方変えるだけでこんなに違うんだなって。自分でも、そういう風に弾きたいっていう、好奇心というか、憧れというのも大きかったです。

【川浪】 なるほどね。ちなみに、無駄が多いと言われて、じゃあどうしたらいいとか、そういうのは教わらなかったんですか?

【山田】 教えていただいていたんですけど、やっぱり見ただけだと分からなくて。動きを足すほうは、結構分かったりするんですよ。例えば、こういう動きをしたほうがほうがいいんじゃない?は分かるんですけど、無駄な動きって、引いていく動きじゃないですか。そういうのってなかなか、分からなくて。

【川浪】 じゃあ、ピアノの先生は、お手本を見せてくれるっていう感じなんですか?

【山田】 そうですね。ピアノも、何人かの先生にレッスンしていただいたんですけど、「こうしたほうがいいよ」ってお手本を弾いていただいて、動きをプラスするほうがメインだと思うんです。

【川浪】 じゃあ、そういう動きをしようと思っても、そもそも余計なことをやっているので、なかなか上手く弾けない、ということなんですか?

【山田】 そうですね。どれが無駄な動きか、みたいなところは分からなかったですね、全然。

アレクサンダーテクニークを受けてから、ピアノって、こんなに弾きやすかったんだと実感

【川浪】 ありがとうございます。では、そういうきっかけで、アレクサンダーテクニークのレッスンを受け始めたわけなんですけども、レッスン受けてから、どういう効果がありましたか?

【山田】 レッスン回数を重ねるごと、だんだんと身体の仕組みが分かってきて、ピアノって、こんなに弾きやすかったんだっていう実感をしています。無駄のない演奏をしてみて、はじめて、今まで、こんなに無駄の多い動きをしていたんだな、と気づいて、過去の演奏を見直すきっかけになっています。しかも、無駄のない状態を分かっているので、本番で緊張したときも、ここ固めているんじゃないかな、とか、ここ緊張しているんじゃないかな、みたいに、だんだん分かるようになってきました。

【川浪】 無駄じゃない状態っていうのは、どうやって分かったんですかね?

【山田】 私の場合は、レッスンを受けるまでは、骨がどういう仕組みになっているとか、どんなふうに動いているとか、意外とあいまいな感じだったんです。レッスンでは、その骨格標本とか、あとは解剖の本を見せてもらって、身体がどういう仕組みになっているのかを、分かりやすく教えていただきます。あと、先生は見ただけで、私の身体のどこが固まっているとかも分かったりされているので、ここ固めているんじゃない?と、教えてもらえますし、それに加えてどういうことをしたらその無駄が取れるんだよみたいなことを分りやすく教えてもらえるので、それを自分の中できっちり自覚してあげることで、ピアノを弾くときに、こういうパッセージなら、こういう動きをすればいいんだなっていうのが、自分の中でだんだん消化できてきたというか、頭の中で命令しやすくなってきました。

【川浪】 じゃあ知識的にも理解できるし、自分の身体の実感としても、ちゃんと得られるという感じですか?

【山田】 そうですね、知識だけでなく、実際に身体で体験できるので、二重に得られるので、すごく染み込みやすいというか分かりやすくて、自分の身体が使いやすくなったなという実感はありますね。自分では、常に力が入った状態なので、力が入っているっていうことが分からなかったりするんです。で、先生に指摘されることによって、それを自覚できるますし、対処法も教えていただけるので、すごく改善していくのが、目に見えて分かるなって。

音も姿勢も、きれいになったね、と言われるように

【川浪】 じゃあ、レッスン受けていろいろ効果を感じられていると思うんですけれども、周りからは、何か言われたりしますか?

【山田】 あります!すごく姿勢が良くなったね、とか、音がきれいになったね、とよく言われます。昔は、不自然な姿勢といいますか、すごく弾きづらい姿勢で弾いていたので。。。今は、無駄な力が入ってないので、音が遠くまで伸びるようになったり、音の響きもすごく良くなったね、と言われます。

【川浪】 なるほど。弾き方が変わることによって音の感じも変わったと。

【山田】 そうですね。1番うれしかったのが、山梨で演奏する機会があったときに、母の知り合いのピアノの先生から「身体の使い方が全然変わったね」とおっしゃっていただいて。

【川浪】 それは地元で昔から知ってる……。

【山田】 そうですね。小さいころから聞いてくださっている先生で、コンサートやコンクールも、毎回のように聞きに来てくださったりしていたので「一年で、こんなに身体の使い方が変わるものなんだね」と、私の母にLINEが来ていました。笑

【川浪】 昔から知っている人から見て変わったということは、やはり相当変わったということですね。

【山田】 そうですね!意外とピアノって、ピアノの先生から身体の使い方を教えてもらっても、変わるのって難しいんですよ。身体って、やっぱり人それぞれ違ったりするじゃないですか。私に「変わったね」と言ってくれた先生も、人に身体の使い方を教える難しさって、よくご存じだと思うんです。だからこそ「身体の使い方が変わったね」という言葉が、すごい嬉しくて。

【川浪】 なるほど。じゃあ変わったねというのは結構深い意味の重い言葉だという。

【山田】 そうですね。本当に一年間、本を読んでいただけでは、全然変わらなかったり、元に戻ったりしていたので、自分の中でも、身体が変わることの難しさを実体験しているので、「すごく変わったね」という一言が、何かすごく重みのある言葉に聞こえました。

本を読んだだけでは、効果がなかったので、レッスンを受けても変わらないのでは、と心配していましたが、、、

【川浪】 やっぱり本だけ見ていても、難しいですか?

【山田】 そうですね。骨の位置って頭で理解していても、自分の身体では、ここからここまで、というのが、いまいちよく分からなかったりして。レッスンに来てから、本で読んでいた知識と、ズレがあったというのに、気づきました。

【川浪】 僕のレッスンに、医師や看護師の方で、楽器をやっている方もいらっしゃるんですけど、そういう方々って、解剖の知識は、おそらく僕よりも詳しいと思うんですね。でも、自分の身体では、こうなっているということを、レッスンで初めて気がつくらしくて。

【山田】 そうなんですね、プロでもそうなんですね。

【川浪】 そうそう、教科書だけ読んでいても、やっぱり分からない。自分の身体と結びつけるのは、やっぱり難しいみたいですね。

【山田】 そうなんですね。

【川浪】 レッスン受けられて、かなり効果を感じられているとのことですが、レッスンを受ける前はどう思っていましたか?

【山田】 いえ、それが、やっぱり一年間、本を読んでいても、全然効果が出ていないわけじゃないですか。レッスンを受けても、もしかしたら変わらないんじゃないかな、という気持ちはありました。まさか、こんなに変わるとは思っていなくて。

【川浪】 じゃあ思った以上にかなり変わったということですね。

【山田】 そうですね、先生から教えてもらうことで、ちょっとしたズレを直していくことで、ピアノの弾き方って、こんなに楽になるんだなと思いました。

【川浪】 かなり楽に弾けるようになりましたよね。

【山田】 すごい楽です。

無駄な力がなくなることで、音に全神経を集中できる

【川浪】 レッスン受けていて効果もあったと思いますけど、思っていたのと違ったみたいなことはあります?

【山田】 自分の中ですごい違ったというのはないんですけど、逆に姿勢が良すぎて感情が伝わらなくなった、と言われることがあります。以前は、いわゆるピティナ弾き言われるんですが、すごく感情を手とか身体の動きで表現するという弾き方をメインにやっていたんですが、そこからはちょっと外れたかたちになるんですよ。いわゆる姿勢が良くて、あんまり動かなくて、音のみで感情を伝えるという弾き方は、あんまり日本では多くないと思うんですよね。

【山田】 でも、そういう弾き方になったことで、今のピアノの先生からは、もうちょっと動いてもいいんじゃないの?身体全体で表現することが音楽なんだよ、っておっしゃられていて、そうなのかな?と思いつつ、、、

【川浪】 山田さん的にはどうなんですか?

【山田】 個人的にその弾き方に疑問をもってきているというか。自分の今ある現状から変えたいなと思ってきたので。姿勢が良くて。海外のピアニストの動画を見ると、すごい音が出て、ピアニシモからフォルテシモまで、すごい幅がある人は、みんな一貫して姿勢がすごいきれいなんですよ。

【川浪】 無駄な動きがないですよね。

【山田】 そうなんですよ。音だけで表現することって、素晴らしいことだなというのを大学一年生のときに感じて。そう思うと、一概には言えないんですけど、身体の動きで表現することだけが音楽ではないんじゃないかなと、すごく自分の中で思います。

【川浪】 ところで、一年生のときに無駄な動きがあると言われたんじゃなかったんでしたっけ?

【山田】 それは違う先生なんですよ。音大の先生って、二人付けたりするので。

【川浪】 じゃあ、その無駄な動きをやめましょう、と言った先生とは、別の先生から、もっと動こう、と言われているんですね。

【山田】 そうですね、今特に言われています。笑

【川浪】 でも、山田さん的には、最初の先生のほうが、、、

【山田】 そうですね。今、自分が求めている方向性が、ピアニシモからフォルテシモまで、響きの質を求めていっているのですが、無駄な動き、例えば肩を上げていると、意外と自分が肩上げて弾いてたときには気付かなかったんですけど、今肩を上げて弾いていると、肩にばかり意識がいくんですよね。そうなると、全部の神経を音に集中させることが、できないなと思ったんですよ。それを思うと、身体で無駄な動きがないことって、ピアノにとっても、自分にとっても、すごいメリットというか、大きなプラスなんじゃないかなと。音の中の表現力は、多分増しているんだとは思います。

【川浪】 そうですよね、僕も聴いていて、そう思いますよ。

【山田】 本当ですか?良かったです。

一日8時間、一ヶ月通して弾いても、全く手は痛くならない

【川浪】 では、このレッスンで学んだことを、今後どう活かしていきたいですか?

【山田】 まずは、ベースとして、演奏しやすい身体づくりといいますか、無駄をなくしてテクニックの邪魔にならないようにしたいです。無駄な動きが一つでもあると、こういうテクニックを弾くうえで邪魔になるんですよね。あとは、例えばフォルテの質って結構違ったりすると思うんです。すごい衝撃音が入るフォルテであったり、響きがあってそんなに汚い音じゃないフォルテであったり。身体の使い方を分かったうえで、そういう音質面も求めていきたいですね。音色のパレットというんですかね、色彩感がもうちょっと出せたら、幅が出ると思うんですよね。この身体の使い方をもうちょっと変えれば、こういう音が出るみたいなことが、少しずつ分かってきているので、そういう音質の幅を広げていけたらと思います。

【川浪】 最初は無駄な力が入っていることが気になっていたけれども、より表現の幅を広げたいというように、変わってきましたね。

【山田】 そうですね。昔は、無駄な力が入ってるから、0か100みたいな感じで、このパターンではこういう弾き方しかできない、みたいなことが多かったんですよ。プレーンな状態を知っているから、そのうえで、ちょっとずつ付け加えるってことが出来るようになったので、それから、さらにこういう弾き方もできて、でも今日はこういう弾き方もできますよ、みたいな。同じ曲の中でも、もっと音質って変えられるんじゃないかなって。同じ曲でも、同じパッセージでも、同じ音でも、同じドでも、音質の幅って、身体の使い方によって違うと思うんですよ。そういうのをもっと増やしていけたらなというのを思います。ほかにも、フォルテシモも、やっぱり身体の使い方がうまいと、すごい出るようになるんですよね。そうすると音量の幅も、音質と同時に出せると思うんですよ。それをいろいろ組み合わせていけたらいいなと。音質と音量を組み合わせて、例えばピンクの中でもショッキングピンクであったりとかサーモンピンクであったり、そういう色の幅みたいなのを出していけたらいいなと思います。

【川浪】 音量の幅も大きくなりましたよね。

【山田】 そうですね、かなり。ピアニシモも、幅が増えたり、すごいきれいな音質で出せるようになったので、ピアニシモからフォルテシモの幅が、前は多分20から80ぐらいだったと思うんですよ。それ、が0から100まできれいに出せるようになったと思います。やっぱり幅が大きいと魅了されませんかね?そういう意味で、音で魅了する演奏ができていけたらなと。

【川浪】 なるほど。ちなみに今までは、どうやって音量を出そうとしていたんですか?

【山田】 フォルテは、ただ単に力で出すものだと思っていました。加えた力が、そのまま観客席でも聞こえると思っていたんですけど、意外と違いましたね。高校のときに、すごいフォルテが出せる人の演奏を生で聞いたことがあって。すごい巨体の男の先生だったんですけど。笑 すごいな、私もあのフォルテがほしいなと思って。で、私は、体重も手も、ものすごい大きいというわけでもなく、肉付きがいいわけでもなく、同じことが出せる力が備わっていないまま、ガンガン力でやっていたので、手を痛めてしまいました。腱鞘炎ではないんですけど、弾き終わったらすごく手が痛くて、お湯に浸けないと、次の日弾けない、みたいな時期がありました。今は、フォルテの出し方って、意外と単純明快というか、シンプルだと思っていて、そういうのを分かってから弾くと、全然手が痛くならないですね。すごいフォルテが続くような曲をずっと一時間、二時間と続けて弾いても、全然手は痛めないですし、今は、一日八時間ぐらい練習をして、それを1カ月続けたとしても全然手は痛めないんです。

【川浪】 すごいですね。それで全然平気なんですか?

【山田】 そうですね。高校のときは、お湯に、バブの「どうしようもない疲れに」みたいなのを使いまくっていたんですけど。笑 使わなくてよくなりました。やっぱり身体の知識を知ってるか知らないか、って結構大きいことなんだなと思いますね。これまでは、力を出すのかって、手だけで完結しがちだったんですけど、フォルテを出すためには、手以外のところでもすごく重要だと気づきました。高校のときに、身体全体を使って弾いて、ってよく言われていて、どういう意味なんだろう、って考えていただんですけど、さっきの表現だけの意味じゃなかったんだなと思うようになりました。

一年に一曲だった譜読みのペースが、一ヶ月に短縮

【川浪】 アレクサンダーテクニークのレッスンを一年ほど受けていますけど、もし受けていなかったら、今どうなっていたと思いますか?

【山田】 さっきの話ですけど、「身体全身を使う」の受け取り方を間違えていたりしたじゃないですか。それで大学という新しい環境に入って、新しい先生に習って、プラスする動きをさらに増やすじゃないですか。きっと無駄な動きに、さらに無駄な動きを加えていたんだろうな、というのをすごく思います。大人になるにつれて、だんだん難しい曲を弾くようになるじゃないですか。高校生では弾かなかったような難しい曲、例えばコンチェルトだったりピアノのソナタだったり弾く機会が増えるんですけど、そういう曲だと、テクニックもやっぱり難しくなってきますよね。エチュードとは比じゃないレベルの難しいテクニックとか出てきたりして。そういうときに無駄な動きがあると、いくら熱量を注いでも見合っただけの成果が得られていないというか。一定のところまではいくんですけど、無駄な動きをしていることによって、その成果が止まってしまうといいますか、練習しても、そこから上達しなかったりするんですね。そう思うと、今みたいな成長はできなかったなと思います。無駄な動きが増えたたままで、故障していたかもしれないですし。できなかったら、練習量を増やして、なんとかしようとしていたのですが、練習量よりも練習の質を見直す機会がすごく得られたなと。

【川浪】 逆に言うと、簡単な曲だったら、無理やりでも何とかなっていたわけですね。

【山田】 そうですね。すごく早く動かしたり、すごく音が飛んだりするフレーズは、なかなか身体の使い方が分かっていないと難しいんですが、
これまで、熱量をかけて練習していたところが、こんなに簡単に弾けるものなんだなという発見は大きかったです。あと、譜読みの時間が、すごく短くなりました。指定のテンポで、弾けるようになるまでの早さは、格段に上がりました。

【川浪】 具体的には、どのぐらい変わりました?

【山田】 私の場合は、20ページぐらいの曲だと、譜読みには結構時間がかかって、どういう動きが使われていて、どういうかたちで動いていて、みたいなことを確認しながらやるので、二週間ぐらいかかるんですけど、暗譜は結構早いペースでできて、そこからだいたい一〜二週間ぐらい。本番のペースになるのは、大体一カ月から一カ月半ぐらいあれば、確実に。コンチェルトでそれくらいです。

【川浪】 アレクサンダーテクニークのレッスンを受ける前は、もっとかかっていたんですか?

【山田】 すごい遅かったです。高校のときは、譜読みに一カ月かけて弾けるまでに三カ月かかってみたいな、本当そういうレベルだったんですよね。私は、音大に入ろうと思ったのが高校1年生だったので、それもあるかもしれないんですけど、最近になってすごく早くなりました。

【川浪】 じゃあ、大学に入ってからも、結構時間がかかっていたんですか?

【山田】 全然遅かったですね。一年に一曲と呼ばれているペースのままやってきているので。

【川浪】 では、ものすごく早くなりましたね!

【山田】 そうですね。なのでレッスンに持って行ける曲のスピードは上がりました。アレクサンダーテクニークのレッスンを受けて、いろいろ思考回路が変わったっていうのあります。譜読みでも違うアプローチをするようになったのが、大きいですね。

【川浪】 譜読みや暗譜は、どんな風に変わったんですか?

【山田】 昔はただ覚えるだけだったんですけど、動きをパターン化してみたり、こういう動きが使えるんじゃないかというのを、考えながら弾くようになったので、記憶に残りやすくなりました。最初から、動きを考えながら弾いていると、ここは、こういう動きで、こういう筋肉を使うんだな、というのが、最初から分かっているので、速く弾けるようになるのが早いんです。

【川浪】 じゃあ、譜読みの段階から、動きとセットで覚えているんですね。

【山田】 そうですね。私は今、一日の中で、1~2ページぐらいしかやらないんですけど、それだと2~3日ペースで弾けるようになったりします。ゆっくり弾いているときから、速く弾くときを想定しているので、頭の中でこの動きだっていうのが、経験則から分かるようになったので。

【川浪】 すごいですね!

【山田】 すごいです、画期的です。笑

もっと自分のポテンシャルがあると感じる人にはオススメです

【川浪】 良かったです。笑 最後の質問ですが、アレクサンダーテクニークのレッスンを、こういう人にお勧めする、あるいは、こういう人にはお勧めしない、というのがあればお願いします。

【山田】 ピアノの奏法に悩んでいる人にはおすすめですね。例えば、もっと自分のポテンシャルって上なんじゃないか、もしかしたら無駄な動きをしてるかもしれないな、というのを、ちょっとでも感じるところがあればすごく勉強になると思います。逆に、譜読みができていないとか、どうやって弾いたら分からないという人は、今じゃないのかなと思います。それはピアノの先生のほうが特化されているので。

【川浪】 なるほど。そもそもどう弾いていいかよく分からないというような人は、とりあえずピアノの先生に習いに行った方がいいということですね。

【山田】 そうですね。何曲かこなしてみて、自分の動きのパターンも何となく分かってきて、ここ弾きづらいなと思って、何か無駄が多いのかもしれない、と思った瞬間が行きごろじゃないかな。

【川浪】 なるほど。一通りじゃあ頑張ってみて、それでも、もう一息というときには来てみたらいいかなと。

【山田】 そうですね。コンクール、コンサート、発表会、何でもいいんですけど、一曲通して弾けて、自分の理想の弾き方があって、それにちょっとでも近づきたい、という人だと、すごく上達も早いんじゃないかなと思います。

【川浪】 ありがとうございます。では、今日は山田さんにいろいろお話を伺いました。どうも、ありがとうございました。

【山田】 ありがとうございました。

山田さんが受講し、無駄な力を手放し、表現力が増したアレクサンダーテクニークの詳細はこちら